小噺
あるお代官の屋敷で、粗相をした女中のおすわ、
代官に切り捨てられまして、
井戸へ投げ込まれてしまいまして。
ところがその次の日から、井戸のある庭の先で、夜中にな
ると、ばたばたばたっと言う音。
そして、火の玉がぼーっと障子に写りますと、
すすり泣くような声で、おすわどーん、おすわどーん、と言う声がする。
さあ、代官はおびえてしまいまして、屈強な浪人者を雇いますと、この幽霊退治を命じました。
浪人者が庭に面する部屋の中で、こう待っておりますと、
夜中、ばたばたばたっと言う音がしたかと思うと、障子に火の明かりがぼーっと写りまして、おすわどーん、おすわどーん、
浪人が「おのれ、おすわ、迷ったか。」
と障子を開けてみますと、夜泣き蕎麦屋が、渋うちわで、ばたばた
火を起こしながら
「おそばうどーん、おそばうどーん。」