落語のまくら 4代目林家小染師匠
夭折の噺家、4代目小染師匠を覚えておられる方は見えるでしょうか?
是非一度、小染師匠の噺を聞いてみてください。36歳で亡くなったと知ると、その才能が惜しまれます。
今日は
1.4代目林家小染 略歴
2.4代目林家小染 人となり
3.4代目林家小染 持ちネタ
4.4代目林家小染 まくら
という感じで進めます。
1.4代目林家小染 略歴
4代目林家小染 本名山田昇。
8歳の時に父親と死別。中学3年の時に3代目林家染丸師匠に弟子入り志願するも断られる。理由は「食べてゆける商売じゃないから」というもの。
大阪市立天王寺第二商業高等学校進学。笑福亭鶴工とは同級生で、二人で演劇部に所属する。この時、二人で落語研究会を作り、演劇部発表会の前座で、二人で交代で落語を一席演じていた。
高校一年の時にふたたび林家染丸師匠のところに、自作の落語をもって弟子入りのお願いに出向く。この時染丸師匠は、
「ちょっとも面白くあらへん。でもねついっだけはこうたげる。」
といわれ、1964年1月、弟子入りを許される。この時、高校は中退している。
1965年の春に京都ヶ月で初高座。当初よりゆっくりした口調であったため、
「歳いったらみんな遅うなるんや。今時分からそんなんでどうするんや。」
といわれていた。
1968年6月、師匠の林家染丸が膵癌で病没。
この時、弟弟子の林家染二とともに、「林家の名前を大きくしてゆこう」と誓い合った。
1972年毎日放送の人気番組「ヤングおー!おー!」で」結成された若手落語家ユニット「ザ・パンダ」(林家小染・月亭八方・桂きん枝・桂文珍)の一員となり、その後人気を博す。
しかし、タレント活動よりも落語家としての活動に重きを置いた小染は、林家染丸一門がおろさないような大ネタに取り組むようになり、1979年9月1日大阪毎日ホールで初の独演会を開催。ここで6代目松鶴に稽古をつけられた「らくだ」をおろしている。
この独演会は1983年まで5回を数えた。
1984年1月29日箕面市の飲食店で飲酒後、酒に酔った勢いで発作的に国道171号線に飛び出し、トラックに轢かれる。翌々日の1月31日、36歳の若さで死去。
この年の秋に4代目林家染丸襲名が決まっていた中での急逝だった。
テンポの速い落語家が、東西ともに多い中で、小染のようなまったりとした味を持った噺家は少なかっただけに惜しまれる。
2.4代目林家小染 人となり
本人も噺の枕で言っているように、未成年の時から酒は飲んでいたようで、大酒家であったようだ。
ただ、酒には飲まれるたちだったようで、酒癖が悪く、そのエピソードには事欠かない。
人生幸朗師匠を楽屋で足蹴にしてみたり、6代目笑福亭松鶴師匠を罵倒したり、2代目桂春蝶、2代目桂枝雀と飲んで揉めたり、あるいは、電柱に上ってみたりと、酒癖は相当悪かった。本人も自覚していたようで、
「わし、きっと酒で死ぬやろな。」といっていた。
ただ、酒さえ飲まなければ礼節をきちんとわきまえた芸人であったと評する芸人仲間は多い。
年がら年じゅう同じ着物を着て、ふろにも入らない生活だった。「風呂に入ると風邪をひく」と、かたくなに入浴を嫌がった。酔った勢いで中央市場のトロ箱で一夜を過ごして楽屋入りをすることも多く、その時の臭さったらなかったと芸人仲間から評されている。
3.4代目林家小染 持ちネタ
・らくだ
・堀川
・景清
・猿後家
・鍬潟
・禁酒関所
・三十石
などを十八番としていた。
特に、「らくだ」は最初に毎日ホールでかけた大ネタで、笑福亭松鶴師匠から稽古をつけてもらったネタで、思い入れも深かったようだ。
4.4代目林家小染 まくら
割とすぐに噺に入ることが多かった。
ですので、今回は酒にまつわる小噺をひとつ。
禁酒
お酒のお好きなかたてえものは、どうもこンところ体の調子が悪いからやめてみようかしらなんと思っても、なかなかこれァやまるもんじゃァありません。
三日坊主ですぐ呑んじまう。
こんなことじゃァしょうがねえから、神さまへ絶っちまおうかしら、なんてことを言って、清水の舞台からもう跳びおりるような料簡になって神様に酒を絶っちまって
「やれ、これで安心だ」
なんて思ってると、そこへすぐ呑み友達が誘いにきますから、
友: えゝ? なにを、絶った? 酒をか? 馬鹿だなおめえは、好きなものを急に絶ってごらんよ、なおよくねえぜそれァ。
どう絶ったんだい。
むこう一年? 馬鹿なまねをするじゃァねえか、ほんとうになァ、じゃしょうがねえ、絶っちまったんだから、じゃこうしなよ、もう一年延ばして二年にしといてなァ、晩酌だけやらしてもらったらどうだ?
自分: おう、そういう方法(テ)もあるなァ、いっそのこと三年にして朝晩呑もうか。
酒飲みというのは、こういうものでございます。
小染師匠の噺は、是非一度聴いてみてください。上方落語の良さがまた伝わります。
今日のところはこれまで。
また明日。