落語のまくら 桂枝雀
こんにちは。
今回は、天才2代目桂枝雀のお話。
1.桂枝雀略歴
2.桂枝雀その哲学
3.桂枝雀 持ちネタ
4.小噺(いわゆるショート落語)
という塩梅で、今日は進めます。
1.桂枝雀略歴
1939年神戸市生まれの、本名 前田達(とおる)
5人兄弟の4番目で、上に姉が3人いる。
終戦間際の1945年5月に、神戸大空襲で父親を亡くす。
1959年桂米朝の弟子に入る。翌年こうべ大学文学部に合格し、師匠の勧めもあり進学するも、一年で退学。1961年に正式に桂米朝の住み込みの弟子として入門。桂小米を襲名する。
才能豊かで活発であった小米(枝雀)は、関西ではとても高い評価を受けている。
1972年からネタつくりに没頭し、それまで受けていた芸能の仕事を断り、家にこもってひたすらネタつくりをしていたが、1973年2月に最初のうつ病を発症。同時に死ぬのが怖いという強迫観念にとらわれ、部屋に閉じこもり、食事も風呂にも入らない状態が続いた。
この時に示した言葉が、
どうならん
ならんことはない。
という言葉で、これが好きで、私の座うの銘です。
何度かの店員のうちに大阪大学医学部の先生に出会い、それまでの投薬治療から根気のいるカウンセリング治療へと転換。じっくり枝雀の話を聞くという治療に転換した。これが功を奏し、病気は快方に向かう。
回復した小米(枝雀)は、妻に
「あんなしんどい病気にはもうなりたくない。」
「これからは笑いの仮面をかぶる」
と話し、自分の講演でも、うつ病発症前は
「楽しいことを楽しくない姿勢で考えてた。」
と振り返って、これからは
「笑いの仮面を被りつづければ、仮面が顔か顔が仮面か、となります。」
と述べている。
桂枝雀独特のスタイルの誕生でしょう。
1973年に道頓堀角座で2代目桂枝雀を襲名。ここからあの枝雀の落語が花開くんですね。私たちの知っている桂枝雀は、1973年のこの襲名以降なんです。
これ以降、上方の落語は大きくそのスタイルを変えたといっていいでしょう。初代春団治師匠の大きな所作や声の大きい芸風を受け継いだように、観客を打爆笑させることになったんです。
私たちのよく知ってる桂枝雀の真骨頂です。
ここから1998年までが桂枝雀の大活躍した時期です。
1973年から1998年までが、桂枝雀が上方落語をけん引してきた時期です。
桂枝雀という大天才を失った上方落語会は、大きな宝を一つ失いました。
2.桂枝雀、その哲学・芸風
枝雀は、笑いの哲学として、「緊張の緩和」が笑を生むと言ってます。これは枝雀が考えた独自の理論で、この考え方に心酔している関西の芸人さんは多いようです。
また、「私の顔を見ただけで、あーおもろかったと満足していただけるような芸人になりたい」といっていたように、つねに観客を意識した高座を演じていたようです。
その考え方が、あの独特の風貌と、愛敬のある笑顔でした。
笑顔で高座に現れる桂枝雀は、それだけで観客は満足したんではないでしょうか。
私は、とても楽しかったです。
晩年は、話の枕を端折ってみたり、また、SRといったショート落語を考案している。
これは、緊張状態のまま下げまで行くという構造をしており、玄人好みと評されている。
立川談志師匠は、「面白いから続けてもらいたい。」と評している。
3.桂枝雀 持ちネタ
代表的なもの。
『青菜』
『あくびの敬子』
『愛宕山』
『池田の猪買い』
『いらちの愛宕詣り』
『うなぎや』
『はてなの茶碗』
『まんじゅうこわい』
『宿替え』
『蔵丁稚』
『子ほめ』
など、代表的なものは、60ネタほどある。
新作落語にも取り組んでいて、1977年には自作の話を『枝雀の会』にかけている。
また、『狸の賽』は、ばくち話が嫌いという理由で演じていない。
もともと英語が得意であったから、英語落語にも取り組んでおり、取り組み始めた当初は、ネタをきちんと英語に訳さないとと思っていたようだが、後半からは落語の面白い雰囲気を分かってもらうことに注力している。
4.小噺(いわゆるショート落語)
レストラン
客 『困るじゃないか、スープにハエが入っている。』
ウエイター『お客様、ご安心ください、ハエの分の料金は頂戴いたしません』
定期券
あ、こんなところに定期券が落ちてる。
誰が落としたんやろ?
名前も何も書いてへんがな。
分かった、期限が切れてるから捨てたんやな。
期限、期限と、、、期限も書いてへんがな。
これ、なんで定期券と分かったんやろ。
犬
犬 『おっちゃん、そこのいてんか』
おっちゃん『あ、この犬、もの言うてる。そんな訳ないわな。犬が人間の言葉しゃ
べるわけないわな。』
犬 『おっちゃん、そこ日陰になって寒いちゅうねん。』
おっちゃん『あっ、やっぱこの犬もの言うてるわ。きしょく悪。』
娘 『お父さん、さっきから何わんわん言うてんお。』
今日はこんなところで下げさせていただきます。
桂枝雀師匠の話は、尽きません。噺家さんというのは、その所作や物腰、そうして噺具合なんかすべてにわたってすごい練習しているんですね。
そういうものすごい努力の片りんも見せず、私たちを笑かしてくれた枝雀師匠を、私は心から尊敬しているのです、ほんまに。