落語のまくら 14
男1人に女2人、なんてぇのは夢のような状況ではありますが、これはこれで苦労はあります。
女房と妾が男1人挟んで、
「お前なんざ殺してやる!」
「殺してやりてぇのはこっちだ!」
「あっ、つねりゃあがったねェ!」
「きー!!」
てんで、引っ掻くの引っ張るのの大喧嘩。
三角関係のもつれってぇやつで。
男のほうはってぇと、自分で巻いた種とはいえ、取り繕いようがない。
仕方がねぇって、こう腹くくって刀を抜きます。
「やい!テメェが悪い。妾の分際でなんだって家まで乗り込んできやぁがる。殺してやるからこっちへ来い!」
てんで、襟首とっ捕まえて奥の間に引き摺り込んでしまう。
もちろんこいつはお芝居で、男の本音は妾の方がかみさんより好きだから、口吸の手伸ばしいので、一戦はじめちまいやがる。
何も知らないかみさんは、清々したってんで喜んで、しばらくしてから奥の間へ様子を見に行くと、中で妾があられもない姿になって、
「死ぬ!死ぬ!」
女房はびっくりして眉毛を逆立てて、襖を開けると、亭主に向かって
「私を先に殺しておくれ」